墓場でデート

幽霊話日月抄

一夜目 桜の木の下で (五)

 死体は出た。白骨化していたが。
 卓巳は休みの日に成海大学の中庭で許可も得ずに桜の木の下をスコップで掘り返した。当初は手当たり次第に掘るつもりでいたが、よく見てみると根元の地面の一ヶ所が少し高くなっていた。もっとも、それだけでは過去に掘り起こした跡だとは言い難いのだが、霊が立っていた位置に近いということもあり、まずはそこから掘り返してみたら一発で死体が出てきた。
 もちろん、すぐに警察を呼んだ。こうなると、霊うんぬんの問題ではない。
 そして翌々日、卓巳は重要参考人として警察に連れていかれた。
「やっぱりね」
「そんな感じの人だったもんね」
 鎌ヶ井高校の職員室の中では、そんな会話が交わされていた。そしてどこから漏れたのか、まもなく生徒中にも広まっていた。
「あり得ないわよ、先生に限って」
 沙織が興奮気味に言うと、それをなだめるように裕香が言った。
「慌てないで。まだ報道とかされてるわけじゃないんだから」
「でもね・・・」
 沙織と裕香が物理準備室で話しているところへ、舞が訪ねてきた。
「あのー」
「お、あなたは先生の知り合い。ねぇ、あなた先生の事、何か知らない?」
「いえ。成海大学で死体が見つかって、先生が警察に捕まったっていう事しか。わたしも詳しく知りたくてここに来ました」
「殺人て、あり得ないわよね」
「はい。あり得ません」
「さっき世界史の山本に訊いてみたんだけど、何も教えてくれないのよ」
「わたしもさっき成海大学に通っている姉に電話したんですけど、出なくて」
「ちょっとさ、みんなで警察に行ってみない?」
 裕香が冷静に水をさした。
「何も教えてもらえないと思うよ」
「それでもいいのっ。じっとしてなんかいられないわよ」
 裕香も舞も、気持ちは沙織と一緒だった。卓巳がいると思われる警察署へ三人は向かった。




テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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